見られる・聴かれる
中学1年でカナダのトロントへ行くまでは、普通に日本でピアノを習っていた。
そうねえ・・・嫌いでもなく、好きでもなく・・・。
母に怒られながら練習するのは嫌だった。だからといって、辞めたいとも思わなかった。
なんだか、日常の中にピアノが入っていたから、練習するのが当たり前だった。発表会も特別でもなかった。ただ、与えられた曲を練習し、会で弾く。そんな感じだった。
日本にずっと居たら、それで終わっていたかもしれない。そして、そのうち辞めていたかもしれない。
トロントへ行き、トロント王立音楽院では上位の方の先生を紹介していただき、面接の後、入門が決まった。そこで、まだほとんど英語なんか喋れない生徒に、弾いて教えて下さった。
グレードの試験を受けるために、日本では全くやっていなかった、スケールやアルペジオ・コード等のテクニックをみっちりやり、聴音や初見などの準備も全てその先生が教えて下さった。
音名だって、「ドレミ・・・」か日本名か若干のドイツ名しかわからない。それを英名から教える。
グレード1からグレード10(その上にARCTというのがある)まである中で、グレード9を受けようとしているのだから、テクニックもかなりの高度まで進んでいる。英語という壁がありながら、良く教えてくださったものだ。
そして、何よりもビックリしたのが、曲そのもののレッスン。
フレーズごとに歌ったり弾いたりして教えてくれる。隣のピアノに座って、一緒に弾いたり、止めては弾いたり。言葉でも言っていたと思うのだが、全く覚えていない。
しかし、その先生に、初めて「音色」というものを教わり、曲想というものを知った。そして、歴史というものが重要で、作曲者というものを意識したのも初めてだった。
以前、どこかで書いたと思うが、「さくらさくら幻想曲」を演奏することになり、見ていただいたときだった。日本で一度やっていた曲である。しかし、その先生が弾いてくださった「さくらさくら」は、実に色彩豊かな、風にハラハラと舞う「さくら」だった。衝撃的だった。
これが音楽かあ!!と、ある意味ショックだった。
それから、だと思う。
私の音楽が変わったのは。考えるようになった。感じるようになった。
そして、グレード9の試験。演奏の方は、とても高得点で合格。それも、色彩が求められるドビッシーやベートーベンのソナタの第2楽章が高得点だった。
これには、先生もとても喜んでくださった。
その後、グレード10を取り、そして、ロシア系の女の先生に変わった。
フランス系の先生とは、かなり曲想や弾き方も違っていたが、いろいろなことを教わった。
初めて服装についてのアドバイスもあった。見かけは大事だから、筋肉隆々は見せてはダメ。だから、優雅な長袖にしなさいと。
その上、音楽の盛んな高校Oakwood Collegiate Institute以前書いている)での、オーケストラとの共演や、室内楽の体験で、音楽の楽しさを味わっていたので、更に弾くことも楽しかった。
そして、大学でのMr.Turiniとの出会い。しかし、その先生の前に付いたDr.Bratuzにコテンパンに身体の動きを封じ込められた苦痛の1年(http://mikipiano53.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-608c.html)を経て、ようやくMr.Turiniに付いたとき、単なる音色だけではなく、身体の動きと呼吸が音色を作り上げることを教わった。
そして、演奏家はパフォーマーであること。聴いている人は目からも耳からも音楽を聴いている。だから、上品でなければならない。優美でなければならない。労働であってはならない。
今の自分に品格は備わっているだろうか?
聴く人に、優美に見えているだろうか?
身体の小さい私が弾いて、きつそうには見えないだろうか?
そんなことを思いながら、ピアノに向かっている。
何の花かなあ・・・
2年目だが、たくさん花を付けた。でも、こんなにも暑いと、ちょっとこの赤は暑苦しい・・・ごめんね。
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コメント
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こんばんは。
>演奏家はパフォーマーであること。。。
実にそう思います。
>今の自分に品格は備わっているだろうか?
聴く人に、優美に見えているだろうか?
演奏者ゆえの悩みですね。
私は2次元の表現者なので、やはり人の口が大いに気になります。
miki53さんの演奏を生でお聞きしたいです。
投稿: EOSのパパ | 2014年7月16日 (水) 20時44分
EOSのパパさん
コメントありがとうございました。
どんなに大変な思いをして練習したとしても、ステージではその苦労は出すな、とロシア人の先生に言われました。
それは、Mr.Turiniにも言われました。体格も手の大きさも小さいので、どうしても弾き方に無理があります。無理な体勢で弾くこともあります。歯を食いしばって弾きたくなることもあります。
でも、それは練習室でのこと。人前では、何事もなかったように楽しみなさい、と。
楽しんで弾く・・・なかなか出来ません・・・。いまだに模索中です(^_^;)
EOSのパパさんの蓮に相当する演奏が出来るよう頑張ります!!
投稿: Mikiko | 2014年7月17日 (木) 00時19分
深いですね
様々な経験を積んで、今、人に教え、
そしてなお自分へ問い続ける。
聴く者、教わる者は、きっと何かを感じるだろうと思います。
投稿: bill | 2014年7月17日 (木) 21時41分
billさん
コメントありがとうございました。
若い頃は、緊張しすぎて、自分の演奏だけに集中して弾くことが多かったです。
だんだん年を重ねるごとに、なんというか「余裕」みたいなのが出てきて、ますます昔先生方に言われていたことが理解できるようになり、聴衆というものをもっと意識するようになりました。
でも、その方が楽しいんですね。この感じをもっと学生の頃に理解できていれば、もっと演奏する機会を増やしていたかもしれません。
もったいないことをしてしまいました。
生徒たちに伝授出来れば良いのですが
投稿: Mikiko | 2014年7月18日 (金) 18時22分
Mikikoさんの、ピアノに取り組む姿勢、素晴らしいですね。
私も見習いたいです。
今私が気を付けていることは、脱力と呼吸です。
それが上手にできるようになると、もう一皮むけそうなのですが。
なにより、大人から始めたので、技術が追いつきません。
でも他人と比べず、昨日の私と比べるようにしています。
投稿: anan | 2014年7月22日 (火) 03時37分
ananさん
脱力!!難しい課題ですね。
とにかく指だけで弾かない! これを心がけるだけで少しは脱力できるかと・・・。
でも、脱力・呼吸を追及しているananさんは素晴らしいです。
なかなかそういうことに気が付かずに弾いている方、たくさんいますもの。
そういうことを、もっと先生方も教えてあげたら良いなあと思うのですが。
見ていて、もったいない弾き方をしているな、と思う演奏がいっぱいありますね。
かくいう私も練習しなくては。
投稿: Mikiko | 2014年7月22日 (火) 10時08分